テーマ なぜ、お墓に水をかける?(28号)

2003(平成15)年1月1日


表紙

 お墓参りに必要なもの、お花、ローソク、お線香にお供え、そして手桶に汲んだ一杯の水と布ぎれ。ざっとこんなものでしょう。お墓を掃除したあと、手桶の水を墓石の上からたっぷりかけて、それからお参りという手順になります。
 この水をかけるという習慣は、いったい何を意味するのかという質問を受けたことがありました。
 ある民俗学者によると死者の霊魂が荒れないように浄化するという指摘もあります。つまり、水をかけることによって、霊魂をしずめようとするのです。
 東北地方では「三日ざらし」とか、「百日ざらし」という習慣もあって、死者が出ると生前に着けていた肌着などをお寺の門前にかけ、その前に水を配置しておいて通りがかりの人に一杯ずつかけてもらうといいます。墓参のとき墓石に水をかける行為は、そうした古くからの日本人の深層心理の名残りだというのです。
 もちろん真宗の門徒には死者の霊魂が荒れるというような恐れはいっさい無用です。したがって、浄化させようとかける手桶の水も無用ということになります。
 いうまでもなく、真宗の門徒がお墓参りをするのは、亡き人やご先祖をうやまい、その尊崇の念を通じてお念仏にあわせていただく機縁を深めることに意味があります。もっといえぱ「お念仏をよろこべよ」というご先祖の言葉を、お墓の前で縁につながる者がそろって合掌しながら心に聴かせていただくのです。
 だから、墓参に際してまずお掃除してかかるのも、この尊崇のあらわれです。水をもちいるのも同じことで、上からタラタラと形式的に水をかけるという呪術的な行為としてではなく、心を込めて墓石をきれいに洗うために行うのです。

●お墓の上から水をかける 
真宗では墓石をきれいに洗うため以外に、ほかに何の理由もありません。

↑『門徒もの知り帳』野々村智剣著より引用

▼住職から最後のひと言
浄化の対象は、生者の私たちだと思います…。


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